大雨特別警報、そして河川氾濫発生情報

 午前4時30分、キンコンカンコン、と河川氾濫発生情報のアラートで叩き起こされた。きのうからの大雨特別警報で、注意喚起されていた。


 「五月雨を集めてはやし最上川」


 とは、松尾芭蕉の俳句。「はやし」と読み込まれているように、最上川は、日本三大急流のひとつだ。その最上川が、線状降水帯による大雨で、あふれた。被害が少ないことを祈っている。


 このあたりは、その最上川の最上流。まったくの暴れ川だった最上川を、大規模な土木工事で、その川筋を定めたのは、戦国武将の直江兼続。野面積みと呼ばれる築城技術を応用し、石垣で堤防を作った。直江石堤とよばれ、市街地を水害から守ってくれている。行政のハザードマップでも、このあたりの洪水のリスクは、ほぼない。


 家を建てるとき、川から近い土地を選んだ。耳をすませば、最上川の流れの音が聞こえる。もちろん、事前にハザードマップで、洪水のリスクを調べた。調べていくうちに、リスクが小さいのは、400年前の直江兼続の偉業のおかげだと気づいた。


 先の東日本大震災のとき、三陸を大津波が襲った。しかし、先人の経験を活かし、津波による建物被害が1軒もなかった地域がある。



 防災を考える上では、その地域の先人の営みを知る、というのも大切かもしれない。

投票所とヘルプマーク

 参議院選挙。


 投票所が遠い。お年寄りや障碍のある方には、大変だ。人手不足もわかる。投票立会人のなり手不足もわかる。投票所を減らしたい気持ちはわかる。でも、やっぱり、遠い。


 投票所に到着する。地方自治体の職員が、いそいそとやってくる。


 「おひとりですか?」


 と、口早に聞いてくる。


 障碍者を連れているんですけど。靴をスリッパに履き替えるのも時間かかるんですけど。段差も大変なんですけど。と思っているのに、ぜんぜん察してくれない。受付に連れていかれそうになるのを、やっと制す。


 「ふたりです。ちょっと待ってください」


 ヘルプマークが目に入らないのだろうか。地方自治体からもらったものなのに。休日出勤なのはわかる。でも、そのせかされそうな、オーラ、お願いだから、ちょっと控えて。




 車いすが必要な方は、見ただけで配慮が必要とわかる。でも見ただけでは、わからないことだってあるのだ。だからヘルプマークを作って配っているんだよね?


 ヘルプマークの根っこは、人と人とがお互いをいたわる気持ち。障害があるとか、健常であるとか、そういう垣根をつくることじゃない。仕事を早くしたいがために、いたわる気持ちを、うっかり置き忘れると、ヘルプマークは目に入らなくなってしまうのだろう。


 せかされながら、受付にいくと、投票用紙を渡される。何かまくしたてている。口早の上に、女性の高い声だから、聞き取りにくいことこの上ない。何を言ったかわからないけど、聞き返す気力もなくなって、にっこり笑う。マニュアルでしゃべっているだけで、きっと、たいしたことじゃないんだろう、と自分を無理やり納得させる。


 渡された投票用紙とおぼしき紙を見る。字が小さすぎて見えない。かばんから、老眼鏡を取り出そうとするが、荷物置き場もない。うっかり渡された鉛筆を取り落とす。もたもたするな、という声が聞こえるような気がする。


 休日返上で、投票所につめている、地方自治体の職員は、仕事が早く、優秀な方なのだろう。公務員試験を、優秀な成績で突破したに違いない。でも、点数ばかりで、つい人の心の根っこを忘れてしまっていいるような気がする。


 投票所には、政党や人の名前しか書いていない。どこに入れるつもりだったか忘れてしまった。老眼鏡といっしょに、選挙公報を取り出す。


 あれ。


 テストの点数より、日本人の育成を、政策に掲げている政党があるぞ。その政党が小さくたっていい。仕事がただ早い人より、いい仕事とは何かを考えてくれる人が増えたら、もう少し世の中が住みやすくなるかもしれない。今回は、この党にしよう。


 自分の持ち分の一票を投じると、投票立会人にお辞儀をして、投票所を後にした。

フキの佃煮(きゃらぶき)―太陽光エネルギーにぴったり―

 抜けるような青空。梅雨に入る前の、最後の五月晴れ。


 このあたりでは、「ダシ」と呼ばれるナスの浅漬けがある。ナスは植え付けたので、アオナンバンを買いにホームセンターに出かけた。前に、行ったとき、直前のお客さんが買って売り切れて買えなかったからだ。でもお店に人に「今年の入荷はもうありません」と言われてがっかり。


 ことしは連休まで不順な天候が続いたので、野菜の苗は買い控えていた。苗を寒さにあてると、ストレスが残って、野菜の味が落ちるからだ。でも、お客さんの求めに合わせて、お店では、早めに苗を売り出す。早めに買って、屋内に保管しておけばいいのだろうが、一条工務店のアイスマートには、そんな苗の保管所もない。


 また来年かと、諦めて、帰る途中、ご近所さんを見かけたので、挨拶すると、


 「ちょっとフキもってがね?」


 と声をかけられた。案内されるままに行けば、広い敷地にある大きな栗の足元に、フキが茂っている。


 「ご先祖様が植えったもんだけっど、増えでなぁ」


 なるほど、大量に茂っている。ご高齢のご夫妻ふたりでは荷が重い。この人手不足の世の中では、時短料理ばかりがもてはやされる。敷地のフキの増え方と住んでいる人の食べる量のバランスが崩れてしまったのだろう。6月に入ると、フキの中に虫が入る確率が高くなるので、今が旬だ。


 「おしょうしな!」


 とお礼を言って、家に30本ほど持ち帰る。


 最初の手順は、天日干し。ここから太陽エネルギーの利用が始まる。


 ウッドデッキで新聞紙の上に広げたフキの風景は、ウッドデッキというより昭和の縁側と言った方がぴんとくる。半日ほど干して、フキが「へ」の字にしんなりしたら、フキの毛をとる。塩で板摺してもいい。大鍋がなかったら、鍋のサイズ合わせてフキを切る。ネットで検索すると、フライパンを使っているレシピも多い。キッチンが狭いから、大鍋は収納できないのだろう。


 沸騰したお湯に、重曹(炭酸水素ナトリウム=灰のかわり)を入れる。2~5%ぐらいの濃度でだいじょうぶ。これが灰汁(アク)だ。塩で板摺していないときは、さらに2~5%ぐらいになるように塩(塩化ナトリウム)を加える。塩濃度を上げて浸透圧を高める戦略だ。フキを入れて2分ほど茹でて、細胞壁を破壊し、そのまま2時間ほどおく。きれいな水に交換しながら、1晩ほど水にさらす。


 これで灰汁抜きは終わり。灰汁抜きの、本来の意味は、灰(炭酸カリウム)を使った、山菜に含まれる有機酸(シュウ酸やポリフェノールなどのえぐみ)の中和反応だ。アルカリ(灰のアラビア語)が足りないと、苦いし、皮を剥くときに手が真っ黒になる。かといってアルカリが多すぎると、ぐにゃぐにゃになってしまう。灰汁の濃度は、極端に変えない方がよい。


 ネットでは、灰汁を使わない、「灰汁抜き」レシピを見かける。伝言ゲームよろしく、灰汁の意味がすり替わったのだろう。「灰汁でえぐみを抜く」が、灰汁がえぐみを指している。まあ、アルカリを使わず、茹でこぼすだけでも、食中毒しない程度には、有機酸は抜けるのかもしれない。


 皮を剥いて、そのままマヨネーズであえてサラダにするもよし、昔ながらの煮物にするもよし。冷やし中華の具にしてもいい。ちょうど、やはりいただいたヤマウドを酢醤油に漬けてあったので、フキとヤマウドを冷やし中華の具にしたら、さっぱりしておいしかった。


 煮物やサラダは日持ちがしないので、大半は、日持ちのするフキの佃煮(きゃらぶき)にする。


 きゃらぶきにするときは、皮は剥かない。


 だし汁、しょうゆ、みりん、酒、砂糖、このあたりは、味付けなので、好みに応じて分量を変えてよい。ここに灰汁抜きしたフキと赤唐辛子を入れて、煮立たせる。


 ここから弱火で、煮汁がなくなるまで、ときどき混ぜながら弱火で煮る。


 弱火で煮るときは、ガスコンロより、IHコンロがいい。


 IHコンロを使って、晴れている休日の真っ昼間にやる。ソーラーパネルとなら、きゃらぶき作りは、なおさら相性がいい。鍋を混ぜながら、太陽光発電モニターを見ると、売電を示すグリーンランプのまま。なんだか嬉しい♪


 煮汁がなくなるまで、1時間ぐらいはかかる。日没前にそこまでたどりつくよう計画しないと、「売電」ではなく「買電」になってしまう。煮汁がなくなるのに、手早くすることはできない。時短料理ではなく、時長料理だ。手際より計画性が求められる。


 できあがったら冷蔵庫に保存。10日に一度ぐらい、火入れすると長持ちする。


 お子さんのお弁当のつけあわせ、ご飯の友、お酒やビールのおつまみに、季節の一品はいかが?