一条工務店は、ある意味、輸入総代理店?

 輸入総代理店とは、海外のメーカーから日本の販売を任せてもらう形式だ。一条工務店は、フィリピンのHRDというメーカーから、アイ・スマートの商標とともに住宅を輸入して販売する会社だから、ある意味、輸入総代理店だ。


 アイ・スマートを開発したのも、製造しているのもHRDなのだから、アイ・スマートは海外の住宅技術だ。住宅技術に限らず、いまやほとんどの分野において、日本の技術は周回遅れ以上と言っていい。技術立国の日本、ものづくりの日本は、もはや過去の栄光でしかない。


 一条工務店に決めたのは、親身になって土地探しをしてくれた営業さんを信頼したからだ。そうは言っても、建てたら倒産したではかなわないので、経営状況などもほかの大手と較べてみたりもした。そして一条工務店というよりHRDの未来志向のビジネスモデルに舌を巻いた。


 たとえば間取りの打ち合わせをする。一条工務店は図面をHRDに発注する。必要経費だから課税対象にならない。全国に展開する展示場の家賃もHRDに支払う必要経費だから課税対象にならない。アイ・スマートもHRDに発注する。これも必要経費だから課税対象にならない。つまり、一条工務店は日本であまりもうけておらず、日本にあまり税金を払っていないのだ。


 一方、HRDは日本から見れば海外メーカーだが、フィリピンから見れば日系企業ということで優遇措置を受けている。経済特区とか関税とか細かい話は省略するが、多額の内部留保も可能で、このコロナ禍でもびくともしない財務体質だ。


 またフィリピンには日本とちがって若くて優秀な技術者がたくさんいる。人材不足の日本で採用するより、現地採用した方がいい。また日本の優秀な人材も、日本で腐らせておくより、ヘッドハンティングしてフィリピンに連れていって、日本と同じ報酬を支払えば、能力にみあった豊かな生活を送ることができるだろう。


 では日本居残り組の一条工務店のお仕事と言えば、なんにでも序列をつけたがる日本人顧客のお相手と、日本という国の相手だ。一条工務店の社員さんは、とにかく資格を取らされる。日本という国のお墨付きを取り付けられない社員さんは、日本に居残っていても仕方がないということだろう。


 フィリピンのHRDは日本の政策に対策を打つ。ZEH義務化と聞けば、ソーラーパネルを製造してZEH補助金の獲得を目指し、ZEH補助金の条件に蓄電池が付け加えられれば、蓄電池を製造してZEH補助金の獲得を目指す。一条工務店が日本に払う税金を節税し、日本の顧客とともに補助金の獲得を目指す。それが日本に対する戦略だ。


 これからハウスメーカー選びをする方の参考になるかもしれないと思って書いたが、そうで無い人にも、これからの日本の将来について思いを馳せてもらったら、なお嬉しい。