エコワンは深夜電力より従量電力

 部屋の中を、秋風がすうっと通り抜ける。窓から見える桜の葉の早いものは紅葉をはじめ、栗のいがもだいぶ大きくなった。


 「消火しました!」と音声アナウンス。ガスコンロデリシアからである。慌てて窓を閉める。部屋の中を通り抜ける風で、炎が不安定になるのを検知し、自動消火したのだ。仕方ないとは言え、ここはガスコンロより、IHの方がいい。フライパンの調理を早々に切り上げ、IHヒーターの上の鍋の中をのぞき込む。ちょっと汁物が恋しい季節だ。


 一条工務店のアイ・スマートの熱源オプションは、エコワンダブルハイブリッドの4系統タイプだ。エコワンシングルハイブリッドは、床暖房はガス運転のみなのに対して、エコワンダブルハイブリッドは、床暖房もヒートポンプとのハイブリッドだ。


 発電機能を持たない給湯システムで環境に優しいのは、エコキュートとエコジョーズだろう。環境政策を進めたい国が2010年まで給付金制度を設けたこともあって、オール電化住宅とエコキュートの組み合わせは一気に普及した。


 エコジョーズが従来のガス給湯器に比べて環境に優しいのは、ガスバーナーの燃焼を使う一次熱交換器に加えて、排熱で予熱する二次熱交換器があるからだ。エンジンでたとえるならターボエンジンということろだ。


 エコキュートが従来の電気温水器に比べて環境に優しいのは、エアコンと同じヒートポンプを使っているからだ。しかも冷媒として、フロンではなく二酸化炭素を使っているので、その意味でも環境に優しい。そうは言ってもエコジョーズやエコワンのように瞬間湯沸かしはできないので、お湯切れしないよう予め貯湯タンクにお湯をためておく必要がある。電力会社は負荷平準化した方が環境に優しいしコスパもいいいので、深夜電力を低く価格設定する。電力会社と国の環境政策と住宅のニーズが一致して、オール電化住宅とエコキュートの組み合わせが一気に普及したのだ。


 エコワンも電気で動くときはヒートポンプを使う。しかし、エコキュートとエコワンのヒートポンプはコンセプトが違う。まず冷媒はオゾン層破壊係数がゼロのR32だ。R32は地球温暖化係数も675と比較的小さく、現時点で、最もバランスの取れたガスと言える。R32を使い貯湯タンクを160リットルと小さくし、貯湯温度も45℃位と生活温度帯にあわせて保温する。エコキュートではお湯切れしないように約90℃まで炊き上げる。熱の移動は貯湯温度と外気温の温度差と貯湯タンクの断熱性能で決まる。仮に貯湯タンクの断熱性能が同じだとすれば、貯湯温度45℃のエコワンに比べて、貯湯温度90℃のエコキュートは、貯湯タンクから外に逃げる熱がかなり多いということだ。これは外気温の低い寒冷地の冬になれば、より一層大きな差となる。


 こんなコンセプトのエコワンは、いざとなったらガスで沸かせばいいので、貯湯タンクのお湯が少し冷めたら昼でも夜でもヒートポンプでちょこちょこ最低限の保温する。つまり、こういう風にヒートポンプをこまめに運転するには、深夜電力より従量電力の方が相性がいいのだ。


 ここでライフスタイルに視点を切り替える。職場や学校に家族が通って、昼はあまり在宅しないという期間が人生においてどれくらいあるかということだ。ましてこのコロナ禍で在宅勤務が増えたりすればなおさらだ。ずっと家に病人を抱えていたりしても事情は変わらない。


 そんなわけで、エコワンと従量電力の組み合わせに至ったのであった。