ダメ出しするより、好きになりたい

 三月も半ばになると、やっと氷漬けの毎日から解放される。土が見えると、春が来た!と喜びもひとしおだ。この季節の雪は、真っ白ではなく、真っ黒な泥にまみれている。見た目、汚い。その汚い雪を見て、春だなあ、と嬉しいのだ。


 このあたりの人は、たいてい「雪さえなければいいのに」と、口にする。たしかに雪かきは、大変だし、道は狭くなって往来にも差し支える。でも、そんな雪に埋もれた季節に、よそから訪れた人は、たいてい「素晴らしい眺めですね!」と口にするのだ。


 雪国だって、いいところがある。


 家もそう。一条工務店のアイ・スマートだって、ダメ出ししたらきりがない。でも営業さんの「100点はありませんからね」の言葉が思い出される。及第点は、合格なのだ。まして、まかりなりにも注文住宅なのだから、思い出が詰まっている。


 人もそう。あれこれあら捜しして、悪者に仕立て上げたり、目の敵にするより、その人の魅力に触れて、好きになった方が、どんなにか幸せかしれない。


 国もそう。ロシア文学。ロシア民謡。いいものがあるじゃないか。大好きです。戦争は、大嫌いだけど。


 ダメ出しするより、いいところを見て、美しいところを見て、好きになる方がいいな。そうさせてもらえないかな。


 雪解けが進んだ植栽の足元に、花が咲く。一番手はスノードロップ。咲いたあとも何度も雪をかぶり、氷点下二けたを耐え忍び、それでもめげない。その可憐な姿とはうらはらになんと力強いことか。二番手はフクジュソウ。ゆっくりと首をもたげて黄色い花を咲かせる。三番手はキバナセツブンソウ。輝くような黄色は、泥だらけの雪から顔を出した土の上で、遠くからでもよく目立つ。


 ああ、春が来た。