住宅模型と内観パース

 ぼたぼたと大粒の雨が降る。長くは降り続かない。寒冷前線の通過にともなう雨だ。雨が上がって日が照るとオニヤンマがまた飛び始める。


 こんな日は、外に出るより、家に引きこもる。ふだん開けない戸棚を開けたりして、お片付けをしたりする。どういうわけか、散らかすはやさに、お片付けが追いつかない。


 住宅模型が出てきた。家を建てる前に作った。間取りの打ち合わせで間取りが変更されるたびに作ろうとしたのだが、それも変更に制作が追いつかなかった。それでも、いくつか住宅模型を作った。一番役に立ったのは、日照の検討だったように思い出す。


 百均で方眼つきの工作用紙を買ってくる。そこに打ち合わせのとき渡された配置図をもとに敷地を書き込む。このとき道路やご近所の建物をいっしょに書き込むのがコツだ。百分の一の模型を作りこめば、よほど大豪邸でもない限り、街一角丸ごと工作用紙に収まる。


 打ち合わせのとき渡された設計図をもとに住宅模型を作る。一条工務店のアイ・スマートは1スパンが910ミリ。工作用紙の方眼紙は1センチピッチだから、線の上にぴったりは乗らない。紙は何でもいいのだが、お中元などでいただいた箱が薄手の段ボールだったりするとお誂えだ。化粧箱の色が、ハイドロテクトタイルの色に近いものがあれば、色のイメージもできる。ご近所の家や近くの樹木も作る。あとは、実際に向きをあわせておけば、リアルな日照がわかる。室内の日照をみたいときは、屋根をなくして、窓を切り抜いたバージョンを作成するといい。


 着工してから、引き渡しまでに、ジオラマに仕上げてやろうと思っていたのに、結局ずっとそのままになってしまった。こうしてふだん開けない戸棚を開けて、思わず遭遇すると懐かしくて、断捨離とかつれないこと言うなよ、とかひとりごちて、そのままそっとしまい込む。お片付けが追い付かないわけは、このあたりにありそうだ。


 この住宅模型、夏休みの工作にはうってつけだと思う。住宅模型といっしょに中途半端に着色された内観パースもいっぱい出てきた。これも夏休みの図画にうってつけだと思う。もしかしたら、それがきっかけになって、これから家を建てる人、家を建てた人、そうでない人のお子さんたちの中から、将来建築士になる人が出ないとも限らない。


 間取りの打ち合わせのとき、担当してくださった一条工務店の若手の建築士さんが、学生時代の話をしてくれたのを思い出した。


 「卒業制作で、住宅模型を作るんですけど、狭いアパートが、模型だらけで寝るところもなかったんですよ」