外構の植栽

 「一本ぐらい植栽あってもいいんじゃないですか?」


 間取りの打ち合わせが進み、途中から外構業者が打ち合わせに参加したとき、一条工務店の営業さんがそう言った。


 住宅の構造やら間取りやら勉強することだらけでとても追いつかない。そのときまで植栽なんて全く頭になかった。ちょっと勉強するので待ってください、とそれからいろいろネットを検索した。雪国で手間のかからないシンボルツリーは?、などなど。


 南側のウッドデッキを取り囲むように不等辺直角三角形の頂点に目隠しやアイストップを意識してヤマボウシ、ジューンベリー、アオダモ。大型家電の搬入経路からの逃げを忘れないようにしてアオダモは建物の掃き出し窓の近くに。北側ダイニングの目隠しはヒメシャラ。基本は夏は日陰、冬は陽当たり、雪囲いの要らない落葉樹。常緑樹のキンメツゲは物置の目隠し、宅配ボックスの隣に玄関の目隠しのコニファー。和室とリビングからの俯瞰角度は首が疲れない8度。


 外構資材を運び込む業者さんがぽつり。


 「外構ってセンス出ますよね」


 自分も植栽選びの参考にと、ずいぶんとあちこちの外構を眺めて回った。本当にそう思う。


 落葉樹の葉が紅葉し、そして風に散っていく様を窓から眺める。植栽の足元にカタクリの球根を植えた。頭上の落葉樹の葉が生い茂るまでの春の陽射しだけで、球根に栄養をたくわえる。早春のひとときだけに華憐な花を咲かせるので、スプリングエフェメラルと呼ばれる。種から花が咲くまで7年ほどかかる。今年植え付けた球根がうまく来春に咲いて、その種がばらまかれて次の世代の花が咲く頃、このアイ・スマートは10年後のメンテナンスを受けることになるだろう。


 間取りが三次元の空間に絵を描く作業だとすれば、植栽は時間を加えた四次元の空間に絵を描く作業だ。しかも10年、20年という長い時間軸だ。夢のはじまりと言っていい。自分も家族も人も街もどうなっていくのか楽しみだ。