黙祷

 かたかた。


 「ん?地震?」


 途端。


 ぐらぐらぐら。


 たいていの地震は1分程度で収まるものだ。そのはずだった。


 がしゃーん。ぎしぎし。ばりーん。


 終わらない。揺れはますます強くなる一方。このまま永遠に揺れ続けるのではないか、という不安がこみあげてくる。心臓が高鳴る。


 10年前の記憶。


 いつも夏休みに海水浴に行った、陸前高田の高田松原の砂浜は、奇跡の一本松を残したきり、何もなくなってしまった。多くの人が津波の犠牲になった。


 黙祷。


 でも、技術の凄さを実感したこともある。


 大林組が設計施工した東京スカイツリー。工事中だったにも関わらず、東日本大震災にビクともしなかった。同じく工事中だったにもかかわらず、阪神淡路大震災で本州と四国の距離が変わったことを、橋の長さを1メートル伸ばして、見事完成にこぎつけた明石海峡大橋。


 そして、東日本大震災の3か月後。2011年7月に耐震等級3(以上?)一条工務店のアイ・スマートの販売が開始される。その頃は、家のことなど何も知らなかったが。


 一条工務店のアイ・スマートに決めた理由はいくつかあるが、そのひとつは躯体が丈夫だったこと。このあたりは雪が多く、屋根からの雪下ろしに伴う事故が少なくない。雪下ろしの要らない無落雪屋根が欲しかった。それで最初は単純に丈夫そうなRC(鉄筋コンクリート)を考えていた。結論から言って、建物が軽い方が地震の揺れに強く、地盤への負担も少ない。結局、木造、平屋のアイ・スマートとなった。


 間取りでひとつ失敗したことがある。寝室のレイアウトでタンスの向きとベッドの向きを平行にしてしまったことだ。大地震でタンスが倒れると寝てるときに直撃を受ける。建物が倒壊しなくても、タンスの下敷きになってはシャレにならない。突っ張り棒をとりつけ、あとは大地震が来ないことを祈ろう。


 何はともあれ、いつなんどき、何があるかわからない。だからこそわくわくもするし、がっかりもする。その当たり前のの日常を過ごせていることに感謝したい。