住宅の名義

 この一週間で庭のヤマボウシも真っ赤に色づいた。電気ガスハイブリッドの床暖房もぼちぼち使い始めている。日が短くなってソーラーパネルの発電量もだいぶ減った。


 一条工務店のアイ・スマートのソーラーパネルは屋根一体型だ。固定資産には、ソーラーパネル葺きと記される。ソーラーパネルの売電収入は、ソーラーパネルの所有者の収入だ。もちろん、多額の収入があれば、納税義務もソーラーパネルの所有者にある。


 もし、住宅の所有者の名義が単独名義ではなく共同名義だと、ソーラーパネルの売電収入の納税負担も、共同名義者の協議が必要になる。たとえば、夫婦の共同名義で、残念ながら離婚に至ったりすると、いろいろと揉めそうである。さらにそんな状況で、不幸なことに夫婦どちらかがあの世に旅だったりすると、遺産相続する子どもにとっては、まさに泣きっ面に蜂ということになる。もっともこの手の不幸は立て続けに起こると相場が決まっているが。


 かたや、たとえば夫婦の住宅の所有者の名義が夫の単独名義だと、妻の親から多額の住宅資金の贈与を受けたとき贈与税がかかる。直系尊属でないと住宅資金贈与の非課税の特例が適用されないからだ。ちなみに、非課税枠は、耐震性能や断熱性能、バリアフリー性能が高いほど、大きい。もっともそんな非課税枠いっぱいの高額の資金を親から贈与される人は、よほど裕福な家庭だろう。


 通常の贈与の非課税枠は年間110万円。相手が妻だろうが親だろうが受け取った人が納税義務を負う。受け取った額が110万円を超えたら、税金を払えばいいのだが、申告もめんどくさいし、やはり節税したいというのが人情だろう。ここで間違いやすいのは受け取った額の総額に対して課税されるということだ。住宅の価格に対して110万円という額のなんと微々たることか。つまり、贈与を非課税枠内に収めようとするなら、直系尊属の親からの贈与以外はあまりあてにならないということだ。


 贈与する方は好意で贈与するわけだが、贈与する人が税の仕組みをよく理解している人ばかりとは限らない。贈与のうち何割かが税務署に持っていかれるとあとで知ったら、やはり釈然としないものがあるだろう。


 このように名義は、贈与や相続にまで大きくかかわってくる。自分や親の面子や体裁を優先するあまり、子供を相続のもめごとに巻き込むリスクを大きくしまうようなことは避けたいものだ。そのためには、家を建てる前に、まず自分が贈与や相続について勉強すること。次に親兄弟や子どもなど、贈与や相続にかかわりそうな人にもそのこと教えること。その上で、名義をどうするか決めること。まあ、振り返ってみれば、住宅取得する過程で、付け焼刃ながらも、住宅の性能ばかりでなく、法制度なんかもずいぶんと勉強したなあと思う。