もっとも滞在時間の短い部屋

 ホトトギスが紫色の花を咲かせ始めた。色づき始めたヤマボウシの足元には、濃い赤のワレモコウと白いフジバカマ。勢いよく茂っていたイネ科の雑草も影をひそめ、すっかり秋の庭である。


 外気温は一桁。20℃近い温度差をものともせず断熱してくれる分厚い壁はありがたいが、床が冷たく感じることが多くなってきた。体が寒いというより、はだしで歩くと冷たいという感覚だ。特にフローリングがそう感じる。和室の畳は、フローリングに較べて、あまり冷たく感じない。


 そろそろ4系統ある床暖房のタイマーの設定にとりかかる。1系統はダイニング・キッチンとリビング、玄関、風呂、トイレと生活の心臓部とも言える部屋につながっている。タイマーの設定を考えていて、ふと気がついた。リビングはもっとも滞在時間が短いのではないか、と。昔の日本家屋の居間、茶の間に近い機能を果たしているのはダイニング・キッチンだ。ご飯を食べたり、お茶を飲んだり、おしゃべりしたりの時間は、ダイニング・キッチンで過ごす。また、徹夜でもしない限り、寝室もそれなりの時間を過ごす。こういった時間は生活必需時間とも言えよう。


 リビングで全く時間を過ごさない訳ではない。ピアノを弾いたり、テレビを見たり、音楽を聞いたり、掃き出し窓から庭を見ながらアナログな手紙を書いたり。一条工務店アイ・スマートのビルトインのテレビボードにおいたテレビにAVアンプYAMAHA RX-S602をつなぎ、JBLの天井埋め込みスピーカーを5.1サラウンドで聞く。あ、ちなみにYAMAHA RX-S602を選んだのは、ビルトインのテレビボードのラックの高さからコンパクトタイプでないと置けないことが後でわかったからだ。でも、ともかく、こういうのは贅沢時間なのだ。ゆとりがなければ贅沢はできない。そんなわけで現時点で、リビングはもっとも滞在時間の短い部屋だ。


 反対に、現時点で、滞在時間の大半を占めているのが、予備に作った洋室だ。家族の誰かが寝たきりになったり、失業したとき居候させたり、そうでなければ収納スペースにでもと思っていたのだが、このコロナで在宅勤務が増え、テレビ会議用に大幅に模様替えして大活躍することになってしまった。そもそも家を建てることからして、人生想定外だらけである。


 床暖房は4系統だが、タイマーの設定は2系統にひとつだ。断熱性能のお陰で、まだ控えめ運転で十分だし、電気とガスのハイブリッドなので、床暖房の立ち上がりが早いから、寒く感じてから手動で入れるでもいい。ただタイマーの設定にあたって、間取り設計のときには、あまり考えなかった部屋の滞在時間に思い至った次第である。


 ああ、リビングでゆっくり贅沢時間を過ごせる日が来ないかなあ。