気密性がもたらす遮音性で失われるもの

 住宅の気密性がもたらす効果は、断熱性の向上とそれによる省エネ効果だけにとどまらない。気密性がもたらす優れた遮音性は、室内環境を屋外の騒音から解放する。


 しかし遮音性の弊害もある。


 屋外の騒音がなくなると室内の音をうるさく感じる。一番うるさいのは、二十四時間換気の吸気の風切り音。寝室が近いと飛行機で寝ているようなかんじだ。次に気になるのが冷蔵庫のコンプレッサーの音。


 扇風機の音も聞こえやすくなる。扇風機のリズム風や1/fゆらぎは、賛否両論あるようだが、これがあると、逆に二十四時間換気や冷蔵庫の音があまり気にならなくなる感じがする。


 逆に聞こえなくて寂しいのが風鈴の音。窓から風になびく短冊が見えて、確かに鳴っているはずなのだが、聞こえない。スピーカーをミュートした動画再生のようだ。風情を感じられないのはちょっとむなしい。


 それから突然降りだした雨の音。これが聞こえないと、せっかく干した洗濯物が台無しになる。


 一条工務店の監督さんにこの話をしたら、


 「ドアホンで聞くのはどうですか?」


 と真顔で言われて、一瞬納得しかけた。でも、待てよ。ドアホンのボタンを押すということは、既に雨に気づいているわけで、ボタンを押すまでもなく洗濯物を取り込みに外に出るだろう。雨の音が最初の気づきを与えてくれることが大切なのだ。


 一条工務店の監督さんといっしょに苦笑い。室内を静音環境を保ちつつ、突然の雨の音だけを伝える機能は、もう少し先の世代の住宅になりそうだ。