窓と光

 「すみません、ちょっと窓を大きくさせてください、面積足りなくなっちゃって」


 建築士と営業が、済まなそうな顔をする。建築基準法では、開け閉めできる窓の面積を部屋の床面積の1/7以上設けなければならないのだそうだ。一条ルールではなく建築基準法である。


 予算削減のため床面積は減らせても、配電盤やら情報ボックスやらを取り付ける壁の面積は減らせない。自然と窓に裂ける壁の面積が圧迫される。


 それに一条工務店のトリプルサッシは重たい。掃き出しの引き違い窓は特にそうである。四肢に障害があったり力が弱かったりすると窓の開け閉めが生活の負担になる。それなら、いっそ窓を無くせばいい。気密断熱するにもその方が有利だ。しかし建築基準法の縛りがあった。


 図面の表記を「寝室」や「リビング」などの居室ではなく「納戸」などにすれば、採光面積の制限はない。建築士は設計図の部屋の表記まで気を使っている。でも窓の役割はそんな事務的な話では済まない。


 光の無い生活は不健康だ。


 太陽の光で、体内でセロトニンとメラトニンというホルモンが正しく分泌される。


 セロトニンは「幸せホルモン」とも言われる。不安を無くし、ストレスを低減するホルモンである。老化の防止にもなる。明るい朝の光を浴びることで分泌が高まる。


 メラトニンは睡眠や免疫機能と関係している。光による体内時計のリセットがないと不眠症になるばかりでなく新陳代謝が悪化し、肌や内臓などの老化が早まる恐れがある。


 つまるところ、十分に採光できる窓を作れるよう壁を工夫するのが良いようだ。