川床と床冷房

 ひんやりとした川風を感じ、涼の風情を堪能する川床は、暑い京都の夏の風物詩だ。



 一条工務店にもさらぽかという床冷房システムがあるらしい。床暖房があるのだから床冷房も、と思う気持ちはわかる。しかし風のあるなしという点で、川床と床冷房とはだいぶ違うように思う。


 そもそも、熱は温度が高い方から低い方へ移動する。低い方から高い方へは移動しない。この一方通行なところが、暖房と冷房とを別々に考えなければならない理由だ。


 ちなみに熱の移動の仕方は、炭火や陽だまりのような「放射」と、湯たんぽや水枕のような「伝熱」と、温風や冷風を使った「対流」の三種類しかない。


 暑いときは体の内から外へ熱を移動したい。そんなときは体の表面全体から「対流」で放熱できる風が涼しい。京都の川床でひんやりとした川風にあたる方法だ。川風のかわりを探すとすれば除湿器と扇風機の組み合わせだろう。ほどほどに使えば発汗機能が損なわれることもなく健康にもいい。


 逆に寒いときは外から体の内へ熱を移動したい。そんなときに風を使うとせっかくの体温まで奪われてしまう。風を使わず「放射」で暖まるのがいいと言える。日本の古民家で、すきま風が入らないようにして、囲炉裏で炭火を熾こす方法だ。それを現代風にしたのがアイスマートの気密断熱と床暖房システムの組み合わせと言える。


 結局のところ、涼や暖をとる基本は昔も今もそんなに変わらないようだ。