あこがれ

 「見てきます?」と屈託のない笑顔で現場に招き入れてくれた若い大工。
無口でこちらから聞かなければ、あとは何も喋らない。


 「なんで大工になったの?」


の問いにぽつりぽつりと語りだす。


 「俺ンちのリフォームしてくれた大工がカッコ良くてさ。その大工にあこがれたんスよ。あ、別に変な意味じゃなくて。そんで高校卒業するとき、たまたま募集してた一条工務店に就職したわけ。一条工務店って将来人手不足にならないようにって、プロパー大工を育ててるんですよ。俺もそのひとり」


 ぶっきらぼうに応えているあいだも、手は休めない。


「ほら、俺若いでしょ?だから未熟なんじゃないかって思われるときがあって」


 すこし雲行きが怪しい。すかさず


「大工は年じゃないよね?腕だよね?」


 と返す。するとこちらを振り返り


「そうなんス!」


 と満足そうににっこり笑った。