いちごジャムが欲しい

 いちごジャムが食べたくなって買ってきた。で、パンにいちごジャムを塗る。どうにも塗りにくい。


 日本では果実がごろごろ入っているブレザーブタイプの方が高級とされているけど、果実がごろごろしていない方が、パンには塗りやすいのだ。


 いちごの真ん中の白い部分にはペクチンという成分があって、これが砂糖と酸と反応してゲル化する。ペクチンがもっとも多いのはりんごだろう。果肉全体ペクチンだらけ。なしはペクチンが少ない。オレンジの皮にも白いペクチンが多い。でも皮を砂糖で煮たものはジャムではなくてマーマレードと言う。


 十分な砂糖が含まれていないと、ゲル化が不十分な上に、カビが生えやすい。低糖のジャムはゲル化剤を添加せざるを得ず、開封後は冷蔵庫で保管ということに相成るのである。


 カロリーを控えたい人は、低糖のジャムを使うのではなく、ふつうのジャムを薄く塗った方がいいのである。ブレザーブタイプは果実がじゃまで薄く塗れない。いくら低糖でも厚く塗ってしまったらカロリーオフもへったくれもない。


 ゲル化が不十分だと、塗ったあとにだらだらこぼれてくる。


 塗るときにしゃっと平らに塗れて、塗ったあとはこぼれない。これが塗料に求められる特性だ。ペンキ屋さんなら誰でも知っているが、チクソトロピー、略してチクソ性と言われる性質だ。ジャムとちがって、はちみつや水あめは、チクソ性がないから、油断してパンを傾けると、いつのまにかだらだらこぼれてべたべたになる。


 さて高級な無垢材を使う家は別として、一条工務店のアイ・スマートみたいな住宅を構成する建材、たとえば壁紙やフローリングなどは表面に印刷がほどこされている。印刷インク、たとえそれがEBコーティングのインクだろうが、やっぱり塗るときにはインクのチクソ性が大切なのだ。家は性能、インクも性能だ。


 いちごジャムだって同じだ。砂糖がばっちり入って、ゲル化剤なんか添加しなくてもチクソ性がしっかりあって、パンに薄く均一に塗れる、そんないちごジャムが欲しい。ジャムも性能だ。


 でも、店頭に並ぶジャムは、みんな低糖で、ブレザーブタイプで、開封後は要冷蔵だけ。そこまで一極集中しなくていいのに。しかたないから、来年になったら自分で手作りしよう。