気密戸建ての音楽の楽しみ方♪

 今朝は抜けるような青空。明るい陽射しで目覚める。寝室のベッドの枕もとのタブレットを操作。音楽を流す。スマホからではない。ダイニングのスピーカーからジャズが流れる。パジャマのままダイニングへ。キッチンシンクの上のデザインガラスが朝日できらきらと輝いている。眩しい。庭で摘み取ったふきのとう味噌で朝ごはん。このあたりでは、ふきのとうをバッケと言い、刻んで味噌に合えたものをバッケみそと言う。春の味だ。


 ダイニングテーブルの上で、スマホを操作。家じゅうに音楽が流れる。気密性能がいい住宅は、音漏れも少ない。だから、あまりご近所に気兼ねすることもない。家族の誰かがジャズよりテレビがいいと言い出したら、そうするだけのことだ。


 3LDK。ダイニングキッチンでDKはいっしょの1部屋、リビングと和室は、仕切りのスリットスライダーを開けたままのことが多いのでおなじ1部屋。あとは寝室と、すっかりテレワーク部屋になってしまった洋室。3LDKなのだが、実質4部屋だ。4つのスピーカーセットを準備すれば、家じゅうに音楽を流すことができる。気密戸建て住宅ならではの、音楽の楽しみ方だ。実は、建てたあとにこの楽しみに気づいた。こんな楽しみ方があるなら、そのために、もう少し間取りやコンセントを工夫しておけばよかった。


 ダイニングの窓から植栽を見ながら、朝ごはんを食べ終える。ダイニングテーブルから食器をシンクにおいて、リビングに移動。掃き出し窓から植栽を眺め、和室のウッドデッキから、輝くばかりに咲いた黄色の水仙を眺める。大きなあくびをひとつして、寝室の寝具を片付ける。そして、洋室のパソコンの前へと移動する。そのあいだ音楽が途切れることはない。家じゅうにジャズが流れているのだ。ンズんっと響くベースのリズムが心地よい。イヤホンではないから、すれちがった家族とふつうに「おはよう!」を交わせる。音楽と生活がごく自然に一体化する。




 音楽でも絵でもそうだが、巧い演奏と良い演奏は違う。巧い演奏は褒められるが、よい演奏は愛される。がんばって褒められているのに満たされない思いをしている人と、ただそこにいるだけであたりを幸せにする人の違いと言えば、伝わるだろうか。


 良いものは、出しゃばらず、寄り添い、飽きがこない。邪魔にならない。


 住宅も、同じだと思う。



 あ、Last call。


 印象に残る曲というのは、出だしの最初の音の、そのまたいちばん先っちょの響く前のあたりで、それとわかるものだ。たとえば、寅さん映画の「男はつらいよ」のぴゃ~のぴの音が出るかでないかで、「男はつらいよ」とわかるように。


 一瞬、ふっとあらわれて、そしてまた、かき消えて、生活の背景に溶け込む。


 アルバムが終わって、家じゅうに静寂が戻ってくる。無機質でがさつなロスガードの換気音だけが残る。心の準備体操は、これで終わり。スマホを操作して家じゅうのスピーカーをオフにする。


 外に出かけるとしよう。