増えてきたアイ・スマート

 山から流れ落ちる水は清い。


 夏の夜に、その山のふちを行くと、闇夜の中に、黄緑色の光に、すうっと流れる。


 ホタルだ。


 山に続く田んぼの水路はコンクリートとなり、農薬のせいもあってか、ホタルの餌になるカワニナはいない。ホタルがいるのは、清い水でカワニナが育つ、山のふちだけだ。


 明るいときに、そこを見れば、山の濃い緑と、田んぼの明るい緑の、一本の境界線だ。


 おや、と思う。


 のびやかに広がる田んぼの先に、赤と緑に縁取りされた垂れ幕。建築途中の住宅。一条工務店の現場だ。近くまでよってみると、ハイドロテクトタイル。アイ・スマートだ。


 住む活を始めたころ、住宅という視点で、街並みを改めて見させていただいたものだが、そのときには、こんなにアイ・スマートはなかったと思う。このところ、街のあちこちで、アイ・スマートを見かけるようになった。


 このあたりは、冬の寒さが厳しい。「暖かい家」にあこがれるのは、よくわかる。


 どのハウスメーカーにしようか、地元工務店にしようかと迷っていたとき、ある地元工務店さんが、一条工務店さんの展示場のおかげで、気密断熱に理解を示すお客さんが増えてきたと言っていた。


 一条工務店以外の施工を受け持つ業者さんが言っていた。


 「一条工務店のお宅に住んでる人は、冬でも半袖で玄関に出てくるんです」


 個人の価値観とは言え、そこまで暖めなくても、と思わず苦笑いした。