エアコンとビルトイン食洗器

 梅雨前線の停滞が続き、長い梅雨がやっと終わったと思ったら、暦の上ではすでに立秋が過ぎ、残暑にしては猛烈な暑さが全国を襲っている。とはいえ、庭にはキキョウやコスモスなど秋を思わせる花が咲き、夜になれば玄関先でコオロギが鳴いている。


 ガス併用住宅なので、北側に設置したエアコンの室外機からはむっとした熱風が出てくる一方、年中お湯を沸かしているエコワンの室外機からは冷風が出てくる。これがオール電化住宅だとここでさらに熱効率を稼げるのだが、寒冷地の場合は、やはり夏の暑さ対策より、冬の寒さ対策を優先したいので、致し方ないところである。


 キッチンには冷蔵庫の放熱器もあり、食洗器からも乾燥の熱風が出てくる。この熱をエアコンでもう一度回収して室外機に熱移動する。とことん熱効率を稼ぎたいなら、冷蔵庫のヒートポンプと食洗器のヒートポンプも一体型の方がいいのだろうが、どこかが故障したりしたときのゆとりと言う意味で、独立稼働の方が安心感がある。


 この食洗器。家事の手間を省き、水やエネルギーの節約に一役買うという触れ込みだが、なかなか一筋縄ではいかない。


 先日、何かのテレビ番組で古いアメリカ映画を見たら、食洗器を使っていた。ビルトインの食洗器を使う前も、外国では食洗器が普及しているのを知っていた。それで、一条工務店のアイ・スマートにビルトインの食洗器を住宅設備として導入したわけである。


 なぜ一筋縄ではいかないかと言えば、まず食器の種類である。実際体験してみてメーカーもがんばって「食洗器対応」と銘打った食器も随分開発されているのだと知ったが、そもそも日本のお椀とか茶碗とかの食器は食洗器と相性が悪いのである。ときどき洗い残しが出てくる。しかもお椀とかお箸とかの本格的な漆塗りは原則食洗器では洗えない。和食は水を使った料理が多いため深い器が多く、また目で楽しませるため器の形も不揃いで、食洗器はなじまないのである。


 食洗器を効率よく使うには、ワンプレートの手づかみメニューが一番いい。同じかたちの平らなお皿こそ、食洗器の面目躍如たる活躍が期待できる。古いアメリカ映画の食事がまさにそうだった。


 でもやっぱり和食もいいと思う。住宅の熱効率も食洗器のエネルギー効率も、そればかり追いかけてゆとりや豊かさを見失っては本末転倒になってしまうな、と思うのであった。