関節リウマチの医療費

  窓から眺める植栽の葉が色づいてきた。また一年が過ぎ、冬を迎えようとしている。日射量が減るにつれて、太陽光の発電量も日に日に減ってゆく。それとうらはらに、増えていくのが暖房費だ。気密断熱住宅のおかげで、それほど寒くない日々を送れてはいても、それなりのかかりはある。暖房費が増える分、どこを節約しようか悩む季節でもある。


 何事もそうだが、知らなくてすむことも多い。でも、家づくりにしろ病気にしろ、現実に直面したとき、知らないより知っていた方がいいこともある。そういうときに知りたくても知りたいことにたどり着けないもどかしさを感じることもある。


 関節リウマチは、年よりの病気ではない。働き盛りの女性に多く、子育てまっさかりの最中に発症することもよくある。そして、関節リウマチはその治療法が劇的に進歩している分野でもある。


 ただ、その進歩した治療には高額な費用がかかる。たとえば2020年1月に承認されたウパダシチニブという薬は、保険適用だが、それでも三割負担でひと月4万円以上もかかるのだ。これに診察や検査などの通院にかかる費用を上乗せされる。しかも住宅ローンとちがって死ぬまで一生払い続けなければならない。だから経済的な理由で治療を見送られることも多い。


 製薬メーカーにしてみれば事情が逆だ。国産のリウマチ治療薬レミケード(やはり三割負担でひと月2~4万円)を開発した田辺製薬は、特許切れから開発費を回収できず収益を上げられずにいる。関節リウマチに対する抗TNF治療の普及率が40%を超えているアメリカに対し、日本は依然として20%にも至っていない。この状況下で、コロナウイルスワクチン開発もそうであるように、日本は海外に新薬開発を頼らざるを得ない状況にある。このあたりの構図もなんとなく気密断熱住宅と似ているような気がする。


 関節リウマチの他覚症状が現れるのは、病気が進行してからのことである。


 これまたあたりまえのことだが、他人の痛みはわからない。まして小さい子供に母親の痛みなど想像できようはずもない。手が痛いぐらいでなぜ家事をさぼっているんだろうと思われがちなのである。関節リウマチは、家族や周囲の理解を得るのがとてもむずかしい病気なのだ。


 病気にならずに健康でいるのが一番なのだが、もし関節リウマチになったら、とっとと生物学的製剤を使う方がいい。劇的に症状が改善し、進行が食い止められる。早い段階で進行を食い止めた方が、その後の生活にきたす支障も少ない。もっとも患者の側からすれば、その高額負担が悩みの種ではあるのだが、特許の切れたバイオシミラー(ジェネリック医薬品のバイオ版)を使えば少しは安くなることも期待できる。


 若い娘さんが将来関節リウマチになるリスクを減らすには、歯周病を予防し喫煙をやめること。関節リウマチは関節の病気ではなく、アレルギーなどと同じで自己免疫疾患なので、口の中を清潔に保つことが予防につながるのだ。


 いつなんどき何があるかなんてわからない。だから今を大切にしたい。今を笑って過ごしたい。みなが笑って過ごせますように。