外皮面積と室温維持、体表面積と体温維持

 春分の日を過ぎたというものの、風はまだ冷たい。明日は雪の予報だ。ここは平成25年省エネ基準で地域区分で地域3、次世代省エネルギー基準の地域区分で地域Ⅱ。お上の住宅に関するお触れを見てると、日本は南北に長いのだなと改めて感じる。


 省エネ基準では地域ごとに定める外皮平均熱貫流率(UA値)というのがある。UA値は小さいほど断熱性能がいい。省エネ基準で求めるUA値が地域3で0.56W/m2・K(ワット毎平方メートル毎ケルビン)なのに対して、一条工務店のアイ・スマートのカタログUA値は0.25W/m2・Kとなっている。


 ちなみに省エネ基準で求めるUA値は、寒い地域ほど小さい。UA値が同じなら寒いほど外に逃げる熱が多いからだ。つまり省エネ基準で寒い地域ほどUA値を小さくしているのは、外に逃げる熱については全国一律にしましょう、ということだ。暖かい地域は暖かいのだから、断熱にこだわらなくても、暖房しなくても、それほど寒くないのだ。


 UA値が同じなら外皮面積が大きいほど、外に逃げる熱が多い。大きな家ほど外に熱が逃げる。UA値が同じなら大きな家ほど暖房にエネルギーを使うということだ。省エネにしたかったらコンパクトな家がいい。仮に切りのいいところで床面積を100m2とし、外皮面積をその3倍と見積もり、外気温との温度差が10度だったとすると、アイ・スマートから外に逃げる1秒あたりの熱は、0.25×100×3×10=750ワットだ。今年一番の冷え込みのときは外気温との温度差が30度だった。そうすると2.25キロワットだ。実際の消費電力と照らし合わせるとアイ・スマートのカタログUA値、換気で逃げる分を大目に見ても、若干サバ読んでるなという感じがしないでもない。


 消費電力と外皮面積の関係は、基礎代謝と体表面積の関係に似ている。人間の体温を維持する基礎代謝は、年齢と性別が同じならほぼ体表面積に比例する。つまり大きな体ほど体温を維持するのにエネルギーを使うということだ。ちなみに住宅のエネルギーはkWh(キロワットアワー)で言うのに、人間の基礎代謝はkcal(キロカロリー)で言う。国際的なエネルギーの単位はJ(ジュール)なのに。一応、20代ぐらいの男性の基礎代謝をワットであわらすと72ワット。おしくらまんじゅうの運動強度を3とすれば若い男性3人ぐらいで温度差10度の暖房が賄える。もっとも不眠不休でおしくらまんじゅうすればの話だが。


 人間の基礎代謝は加齢とともに落ちる。若い人もいつかは老いる。寒さが骨身に沁みるようになる。そうなれば、住宅の暖房で体温維持をアシストしてもらわないとならない。住宅の断熱性能も経年劣化する。長期優良住宅の認定を受けられるアイ・スマートだが、その断熱性能の劣化に関して長期優良住宅独自の要件は無い。ま、何事も満点はあり得ないから、しゃあないなあ。