お家でみんなで卵を食べよう

 卵かけご飯。聞いただけで涎を垂らし、食テロだと思う人もいるかもしれない。


 さて卵はもっとも食物アレルギーの多い食品だ。このところアレルギー症状の子どもは増加の一途を辿る。もちろん少量でも命にかかわる症状を起こしてしまう場合は完全除去が必要だ。だから保育園や学校の給食では事故防止のために、厚労省から完全除去を求められている。つまり給食では卵かけご飯は出ないということだ。重篤なアレルギー症状はサルモネラ菌中毒よりはるかに危険だ。保育園や学校で禁止されている以上、卵かけご飯を食べさせることができるのは家庭だけだ。


 体内の異物に対抗する仕組みを免疫と言う。アレルギー症状はこの免疫の暴発で起きる。食物は全て異物だ。しかし体には小さいころに食べたものは食べ物なので免疫を発動しないように記憶するシステムが備わっている。これを経口免疫寛容と言う。小腸と胸腺がその記憶を定着させると言われているが、胸腺は思春期をピークになくなってしまう。つまり思春期を過ぎたら、大人から教わった食べ物だけを自分で選ぶので、新たな免疫寛容を記憶する必要がないからだろう。


 子どもに好き嫌いさせずにいろいろなものを食べさせる。それが育ててもらって大人になった大人のあたりまえだと思う。アレルギーに過敏になりすぎて卵かけご飯を家庭からも完全除去するのは、交通事故を恐れて子どもを家から一歩も外へ出さないことと同じことだ。


 子どもたちの偏った栄養摂取を是正しようと、文科省が学校における食育の推進として学校給食の充実を求めている。アレルギー食物の完全除去を求める厚労省からの要求とまったく矛盾する要求である。値段もさらに下げろと言われる現場の栄養士の皆さんはさぞ頭を抱えていらっしゃることだろう。


 子どもに好き嫌いさせずにいろいろなものを食べさせる。そして食べすぎさせない。このことは食べ物ばかりに限ったことではないと思う。