「CMなどの宣伝活動をしない」という宣伝

 雨上がりの庭に出る。アジサイ、ショウブ、アヤメなどが咲いている。タチアオイも咲いている。



 梅雨入りと梅雨明けを知らせる花、タチアオイだが、ホームセンターなどでは、ホリホックの名前で売られていることも多い。和名よりカタカナ名の方がおしゃれな感じがするのかもしれないが、統一してもらった方が、便利と言えば、便利である。


 ヒナゲシ(ポピー)、スミレ(パンジー)、アヤメ(アイリス)、ノボリフジ(ルピナス)、ユリ(リリー)、ギボウシ(ホスタ)など、和名とカタカタ名の両方が流通している例は枚挙に暇がない。これが車の名前や家電製品のブランドになると、もうほとんどがカタカナである。


 社名も松下電器がパナソニックになったり、東京通信工業がSONYになったり、かろうじて和名が残っているトヨタやホンダもカタカナである。


 そういう風潮にあって「一条工務店」ってなんだよ?ってかんじである。しかもロゴは武骨な筆文字である。しかも、CMなどの宣伝活動はしていません、とのこと。営業さんにも、それを最初に告げられた。確かにあからさまな嘘はない。でもほんとうに宣伝していないのか?「一条工務店はCMをしない」が知れ渡っている以上、すでに見事な宣伝をやってのけているではないか。自分も巧みな情報戦略にうかうかと乗ってしまったのだが、それで不幸になったわけでもなし、まあ、賢いのだと思わざる得ない。


 家を建てようと思ったら、大手ハウスメカーカーか地元工務店かということで検索するわけだが、「一条工務店」は「工務店」でひっかかってくるのである。客層を絞り込んだ顧客獲得情報戦略がここにもある。TVよりネットを使ってCMしているのだ。一条工務店にとってTVよりネットで調べてくる客の方が上客だということだろう。いったんクリックした情報は、Googleに登録され、いまでは、ちょっとでも住宅関連のキーワードを入れると、何かにつけて「一条工務店」のポップアップ広告が出てくる。TVのCMにはお金は払っていないが、Googleにはそれなりに払っているということだろう。


 また一条はローマ字表記でICHIJO。アメリカで有名になった野球選手のICHIROと一文字違い。アメリカ人がICHIJOとICHIROを打ち間違えても不思議はない。わざとICHIROとHOUSEなどを組み合わせて検索するとGoogleがこちらではありませんか?と検索結果を表示してれる。



 1980年代、インベーダーゲームという大流行したゲームがあって、それを開発したアメリカの会社がアタリ社という会社だった。社名は日本語の囲碁の「あたり」からとったらしい。日本でカタカナ語が新しさを感じさせるように、当時のアメリカでは、日本語が新しさを感じさせたのだろう。


 居間(リビング)、食堂(ダイニング)、台所(キッチン)、寝室(ベッドルーム)。まあどちらでもいいのだが、ついつい、ウッドデッキと言わずに縁側と言ってしまう。


 雨に濡れそぼった縁側から、梅雨が明けたら、今度はどかんと暑さがやってくるのだろうななどと庭を眺めるのであった。