音と一戸建て

 久しぶりの吹雪だ。外の風の音がごうごうと聞こえてくる。


 一条工務店のアイ・スマートは気密性が高く、室内と室外の遮音性が高い。足音が聞こえないので外構の砂利敷の防犯効果は期待できないし、窓の防犯センサーの音が室外に聞こえないのでわざわざ外にブザーが取り付けられているほどだ。それでも吹雪の音は聞こえてくる。


 気密による遮音はあくまで音が空気を伝わる空気伝播音の場合だ。空気が建物をこする「もがり笛」のような風の音は固体伝播音だ。だから吹雪の風の音が室内でもよく聞こえるのだ。雨、エンジン、工事などの音はいったん金属の玄関ドアの固有振動に共鳴して固体伝播音となり、きゅんきゅんいうような響きになって室内に伝わる。


 固体伝播音は空気を介さないので気密による遮音性能とは関係ない。声を出さずにいても、床を歩いたり、壁にぶつかったりすると生じるのが固体伝播音だ。木造は音漏れがすると言うが、その音漏れはあくまで空気伝播音で、固体伝播音に関しては鉄骨だろうがRCだろうが同じことだ。


 一戸建ての場合はお隣さんと建物がつながっていない。アパートやマンションと違って固体伝播音が近隣にご迷惑をかけるリスクは少ない。また逆にご近所の騒音で悩まされるリスクも少ない。


 ピアノのように床に置く楽器の音は、床から建物に固体伝播音となって伝わる。木造は軽いので部屋全体が共鳴する。スピーカーの中にいるようなものだ。コンサートホールで演奏している気分になれる。ギターのように床に置かない楽器でも、響きを楽しむことができる。


 一条工務店のアイ・スマートに天井埋め込みスピーカーがある。これを設置すると部屋全体が共鳴して5.1chサラウンドならでは臨場感が味わえる。4KチューナーつきのテレビならBS4Kで5.1chサラウンド放送を楽しめる。もっとも5.1chサラウンド放送はNHK大河ドラマなどかなり限られていて、音楽番組でも圧縮Bモードステレオがほとんどだ。それでもアンプを選べば疑似サラウンド効果も楽しめる。またYouTubeを検索すれば5.1chサラウンドのコンテンツもある。最近ではサラウンドアンプもテレビボードに収納できるスリムタイプを見かけるようになった。


 リクルートメント現象というのがある。加齢性難聴の特徴のひとつで聴覚補充現象とも呼ばれる。高齢者に小さい音は聞こえないが、大きい音は若い人以上にうるさく感じる現象だ。高い周波数ほど顕著になる。女性や子どもの声がうるさく甲高く聞こえたりするのはそのせいだ。


 5.1chサラウンドのウーハーで低音を建物全体に響かせれば、音を必要以上に大きくしなくても音を楽しむことができる。またそうすることで加齢性難聴の進行を遅らせることもできる。もちろんスマホとヘッドホンステレオによる難聴のリスクも低減できる。そう考えるとBS4Kで5.1chサラウンド放送とウーハーつきのスピーカーシステムはお年寄りにも若者にもやさしいシステムとも言える。そしてそれを実現しやすいのは一戸建てということになる。


 もちろん、吹雪でもなければ、外に出て野鳥のさえずりを直接聞くのが一番だ。たとえBS8Kの22.1chサラウンド放送でも、本物には叶わない。