ジェネリック医薬品と生物学的製剤のバイオシミラー

 発明を公開してくれた人の見返りとして国は二十年間その特許権を保護する。医薬品も発明を公開してくれた人の特許となる。二十年過ぎれば、他の人もその医薬品を製造販売できるようになる。その後発医薬品をジェネリック医薬品と呼ぶ。


 医師が処方箋にバツ印をつけてジェネリック変更不可の明示的な指示をしない限り、患者は自分の意志でジェネリック医薬品を選ぶことができる。添加剤やパッケージはともかく、含まれる薬効成分は先発医薬品とジェネリック医薬品とで全く違いはない。


 生物学的製剤の場合は少し事情が異なる。含まれる薬効成分が生物由来のたんぱく質などであるため、先発医薬品と後発医薬品で完全に同じとは言えないのである。それで生物学的製剤の場合は、後発医薬品をジェネリック医薬品と呼ばずにバイオシミラーと呼ぶ。


 生物学的製剤はとんでもなく高価だ。細胞培養や抽出など複雑な工程が必要だからだ。経済的理由から生物学的製剤の処方をあきらめる患者も多い。だから少しでも安価なバイオシミラーは患者にとってとてもありがたい存在だ。


 ただ、先発医薬品と後発医薬品で完全に同じとは言えないバイオシミラーの場合、万一効き目が違うと困るので、患者が自分の意志でバイオシミラーを選ぶことができない。医師が処方箋に後発品1とか後発品2とか言うように銘柄指定するのである。


 ここで製薬会社の都合が出てくる。新しいバイオシミラーを製造販売する場合、万一在庫を切らすと命にかかわることがあるので、十分な在庫が確保できるまで発売できないのだ。ジェネリック医薬品なら、在庫切れのときに患者の方でほかの製薬会社のジェネリック医薬品に切り替えることができるが、バイオシミラーの場合はそうはいかない。大きな製薬会社ほど多くの患者を抱えるので、より多くの在庫を必要とする。その結果、大きな製薬会社ほど在庫確保まで時間がかかり、発売が遅れることになる。


 一日でも早く少しでも安価なバイオシミラーを手に入れたい患者にとって何とも歯がゆい状況である。