古民家

 人が作ったものはいずれその役目を終えてゴミになる。しかしゴミを出さずに人が生きていくことはできない。住宅も例外ではない。住宅の寿命を延ばせば、空き家のゴミが減る。地球に優しく次世代の負担も少ない。


 さて全国的に過疎化が進む中、つくばエクスプレス沿線地域は踏みとどまっている。首都圏へのアクセスの良さと求めやすい地価が、子育て世代の新築戸建てを呼び込んでいるのだろう。


 そのつくばエクスプレスのつくば駅をからそんなに遠くないところにさくら民家園という施設がある。つくば市が伝統的な古民家を保存し公開しているのである。


 築三百年を移築したと言われるその古民家は、柱も床も煙で燻されて黒光りしている。




「毎日囲炉裏に火を入れてます、そうしないと虫にやられてしまいますから」


 そう言うのは、その古民家の維持管理している方だ。自然はさまざまな恵みを与えてくれるが、住まいにとって自然はせめぎあう相手だ。古民家は住んでいる人が毎日囲炉裏に火を入れることで維持されてきた。


 一条工務店のアイスマートはツーバイシックスの木造建築だ。自然とせめぎあう点では、古民家もツーバイシックスも同じだ。古民家と違って毎日囲炉裏で燻蒸できない一条工務店のツーバイシックス材には予め薬剤を加圧注入してある。


 ホームセンターの資材館にいくと薬剤が加圧注入された木材を見ることができる。明るい色の木材に較べ、薬剤が加圧注入された木材は暗い緑青色でお世辞もきれいとは言えない。しかも加圧注入された木材の値段は倍に跳ね上がる。


 極端な言い方をすれば、加圧注入しない木材を使えば、住宅の値段は半額になる。ただし、その値切った分だけ、いずれ空き家の処分費用として次世代にのしかかることになるだろう。