展示場に足を運んでもわからない箇所

 「家づくりを思い立ったが何から始めて良いかわからない。そう思ったら、住宅展示場や内覧会に足を運んでみましょう」


 家づくりの本にも工務店のチラシにも、この手のセリフが散見される。実際、足を運ぶと、間取りや凝った意匠を紹介されて、なるほどそうかと思い込みそうになる。手品で言うところの視線誘導だ。もちろん、間取りや凝った意匠も住宅の大切な要素である。


 でも、展示場に足を運んでもわからない箇所も多い。


 断熱材や床暖房の施工状況、ルーフィングやサイディング、通風孔などなど。二万点もあると言われる住宅の部材のうち、展示場で現物を確認できるのは、ごくわずかだ。すべての部材を比較する時間が取れる人はそう多くあるまい。結局、営業さんのトークをもとに信頼できそうな工務店を選ぶことになる。


 気密断熱と床暖房を売りにしている一条工務店の展示場では、断熱材やサッシ、床暖房の実物カットサンプルなども展示してある。それでも、基礎の構造や雨漏り対策などは現物を確認するのが難しい。


 実感したのは、着工して地中梁や配筋の施工が進んでからだ。


 その基礎工事の現場に立ち会ったのは、一条工務店とはじめて組む地元のガス屋さん。


 「基礎をこんなに深く掘っているのを見たのははじめてです」


 「鉄筋もずいぶん多いような気がする」


 数多くの工務店の現場に立ち会ってきた地元のガス屋さんの率直な感想だ。


 一条工務店の営業さんが誇らしげに言う。


 「ウチは気密断熱ばかりではありません。トータルバランスの性能ですから」